手元にお金が増えてきたとき、多くの人が「貯金」と「投資」のどちらを先に進めるべきか迷います。結論から言うと、この選択はどちらが得かという話ではなく、すぐに使う可能性があるお金と、当面使う予定のないお金を分けられているかどうかでほぼ方向が定まります。ここを曖昧にしたまま手元の資金をまとめて投資に回すと、急な出費が必要になったときに資金を取り崩さざるを得なくなる場合があります。この記事では両者の違いを整理し、3つの基準で切り分けたうえで、「こういう場合は貯金を優先・こういう場合は投資も検討」という形まで落とし込みます。
貯金と投資は、そもそも何が違うのか?
この2つは、元本が変動するかどうかと、必要なときにすぐ引き出せるかという2つの層で違いが出ます。先に一覧にします。
| 比較の観点 | A:貯金 | B:投資 |
|---|---|---|
| 元本の変動 | 基本的に元本は変動しない(預金保険制度の対象範囲内等の条件がある) | 市場の値動きにより元本が増減する可能性がある |
| 必要なときの引き出しやすさ | 原則いつでも引き出しやすい | 商品によっては換金までに時間がかかる、または価格変動の影響を受ける |
| 目的との相性 | 近い将来に使う予定が決まっている資金に向く | 当面使う予定のない資金を、時間をかけて増やす目的に向く |
| 増える仕組み | 金利による緩やかな増加が中心 | 値上がり・分配等による増加を期待するが、減る可能性もある |
| 始めるための知識・手間 | 口座を用意すればすぐに始められる場合が多い | 制度・商品の仕組みを理解する手間がかかる場合が多い |
| 元に戻せるか(選択のやり直しやすさ) | いつでも投資に資金を振り向け直せる | 値下がりしている局面で現金化すると、元本を割り込んだ状態で確定する場合がある |
表の中で特に見ておきたいのが、「元に戻せるか」の行です。貯金からであればいつでも投資に資金を振り向け直せる一方、投資に回した資金を値下がり局面で現金化すると元本を割り込んだ状態で確定してしまう場合があります。順番を決める際は、この後戻りのしやすさの違いを踏まえておくことをおすすめします。
貯金と投資、どちらを先にするかを決める3つの基準
次の3つを順番に確認してください。基準1が最初に来るのは、ここでほぼ方向が決まる場合が多いためです。
基準1:急な出費に備える生活防衛資金が、すでに確保できているか
病気・失業・急な出費など、収入が途絶えた場合に一定期間の生活を支えられる資金(生活防衛資金)がまだ確保できていないのであれば、まずAを優先する必要性が高くなります。生活防衛資金が確保できているのであれば、それを超える分についてBを検討する余地が生まれます。ここが最も判定力の高い基準です。
基準2:そのお金を使う時期が、近い将来に決まっているか
数年以内に使う予定が決まっている資金(住宅の頭金・教育費・結婚資金等)であれば、元本が変動しないAで管理するほうが計画を立てやすくなります。一方、使う時期が決まっていない、または10年以上先を見据えている資金であれば、Bを検討する余地が広がります。
基準3:元本が一時的に減る可能性を、心理的に受け止められるか
市場の値動きにより元本が一時的に減る場面があっても、長期的な視点で保有を続けられる見通しがあるのであればBに向いています。逆に、元本が減ることへの不安が強く、値下がりのたびに判断が揺らいでしまう見通しであれば、無理にBを進めず、まずAを中心にすることをおすすめします。
3つの基準で見る、貯金を優先すべき人・投資も検討してよい人
貯金(A)を優先すべきなのは、次のような場合です。
- 生活防衛資金が、まだ十分に確保できていない
- 数年以内に使う予定が決まっている資金である
- 元本が一時的に減ることへの不安が強い
- 投資の制度・商品の仕組みをまだ理解できていない
投資(B)も検討してよいのは、次のような場合です。
- 生活防衛資金がすでに確保できている
- 使う時期が決まっていない、または長期を見据えた資金である
- 元本が一時的に減る場面があっても、長期的な視点で保有を続けられる
- 制度・商品の仕組みについて、自分で理解を進める意思がある
基準が割れた場合(例:基準1は生活防衛資金を確保できておりB寄り、基準3は元本が減る不安が強くA寄り)は、基準1と基準3のうち、より慎重な側の判定を優先することをおすすめします。生活防衛資金を確保できていても、元本が減る可能性を心理的に受け止められない状態で投資を進めると、値下がり局面で本来の目的と関係のない判断をしてしまう場合があるためです。無理に投資を先に進めず、まず貯金を中心にしながら知識を積む期間を置く選び方も、有効な選択肢の一つです。
貯金と投資、どちらを先にするか決める前に、先にやっておくこと
- 毎月の支出を書き出し、収入が途絶えた場合に何か月分の生活費が確保できているかを計算する。基準1はここで判定できます
- 近い将来(数年以内)に使う予定があるお金と、当面使う予定のないお金を、目的ごとに分けて管理する
- 投資を検討する場合は、制度の仕組み(税制優遇の有無、手数料、想定される値動きの幅等)を金融機関や公的機関の案内で確認しておく
- 特定の商品を選ぶ前に、複数の情報源を比較し、自分の目的・期間・許容できる値動きの幅に合っているかを確認する
よくある質問
Q. 投資を始めるタイミングに、決まりはありますか。
A. 市場の状況や個人の資金状況によって適したタイミングは異なるため一律には言えません。生活防衛資金の確保状況や使う時期の見通しを、自分の状況に照らして確認したうえで検討することをおすすめします。
Q. 投資は必ず貯金より増えるのでしょうか。
A. 投資は元本が変動する仕組みであり、増える場合も減る場合もあるため、必ず貯金より増えるとは言えません。特定の商品・時期を前提とした断定はできず、制度や商品の仕組みを理解したうえで、自分の判断で検討することをおすすめします。
Q. 基準1で「生活防衛資金は確保できている」と分かりましたが、それでも投資に踏み切れません。
A. その場合は、この記事の基準3(元本が減る可能性を心理的に受け止められるか)が判断の中心になります。無理に投資を進める必要はなく、まず少額から制度の仕組みを学びながら判断を進める方法も一つの選び方です。
あわせて読みたい
iDeCoとNISA、どっちから始める?判断を分ける3つの基準 — 投資を先にする方針に決めた場合、次はiDeCoとNISAのどちらから始めるかという具体的な判断に進みます。
クレジットカードは年会費無料と年会費あり、どっちを選ぶ?使う頻度で分かる基準 — 貯金か投資かを考える前提として、日常の決済で使うクレジットカードの年会費を見直しておくと、家計全体の整理がしやすくなります。
執筆者情報
本記事は、選択コラム(複数の選択肢を比較して決めたい読者に向けた記事)の執筆方針に基づき、断定的な結論や効果の保証を避け、読者自身が判断基準を持てるようになることを目的として執筆しています。実在の監修者は現時点でいないため、執筆方針の明記のみを行っています。また、個人の体験談を結論の断定材料として用いていません。特定の金融商品を推奨するものではなく、投資は元本が変動し損失が生じる可能性があります。制度・税制・商品の仕組みは変更される場合があるため、実際の判断にあたっては金融機関や公的機関の最新の案内でご確認ください。

