変動金利と固定金利の比較は、しばしば「どちらが総返済額を抑えられるか」という問いに置き換えられます。ただしこの問いは、将来の金利がどう動くかを言い当てられることを前提にしており、前提そのものが成り立ちにくいという難点があります。結論から言うと、どちらを選ぶかは金利の予想ではなく、返済額が増えた場合に家計で吸収できるかどうかによって向き不向きが分かれる傾向があります。この記事では両者の違いを整理し、3つの基準で切り分けたうえで、「こういう場合は変動金利・こういう場合は固定金利」という形まで落とし込みます。金利や商品の条件は金融機関ごとに異なるため、具体的な数値は候補の金融機関でご確認ください。
「変動金利」と「固定金利」は、そもそも何が違うのか?
2つの選択肢は「どちらが安いか」ではなく、金利が変わる可能性を誰が引き受けるかと、返済額が確定する範囲が違います。
返済額が変わる仕組みの違い
変動金利では、適用金利が定期的に見直されます。多くの商品では、見直し後も一定期間は毎月の返済額を据え置き、その中で元金と利息の内訳を調整する扱い(いわゆる5年ルール)や、返済額を改定する際の上げ幅に上限を設ける扱い(いわゆる125%ルール)が設けられているとされます。ただしこれらの仕組みがない商品もあるため、一律には言えません。据え置きの扱いがある場合、金利上昇時には元金の減りが遅くなる点にも注意が必要です。
後から切り替えられるかどうか
変動金利から固定金利へ切り替える、あるいは他の金融機関へ借り換えること自体は一般に可能とされます。ただし「金利が上がってから固定へ移る」という進め方は想定どおりに働きにくいと考えられます。市場金利が上昇する局面では固定金利の水準も通常は上がっており、切り替え先の条件も同時に変わるためです。切り替えの余地は残っていても、望む条件で残っているとは限りません。
| 比較の観点 | A:変動金利 | B:固定金利 |
|---|---|---|
| 適用金利 | 定期的に見直される | 期間中は変わらない |
| 返済額の見通し | 将来の金額が確定しない | 期間中の金額が確定する |
| 借入当初の金利水準 | 固定より低く設定される傾向 | 変動より高く設定される傾向 |
| 金利上昇時の負担 | 借りた側が引き受ける | 期間中は影響を受けない |
| 据え置き・上限の仕組み | 商品により有無が分かれる | 該当しない |
表のとおり、Aは「当初の負担が軽い代わりに、将来の変動を自分で引き受ける」選択肢、Bは「変動を引き受けない代わりに、その分の費用を当初から払う」選択肢です。比較すべきなのは金利の高低そのものではなく、将来の不確実性を自分で抱えるか、費用を払って手放すかです。
変動金利と固定金利、どちらを選ぶかを決める3つの基準
次の3つを順に確認すると、どちらへ寄るかが判定しやすくなります。
基準1:返済額が増えた場合に、家計で吸収できるか
最も判定力の高い基準です。金利が上がった場合の返済額を試算し、その金額でも生活が回る見通しが立つならA(変動金利)を選ぶ余地があります。試算した金額で家計が成り立たない、あるいは教育費の増加と重なる時期が想定されるなら、返済額が確定するB(固定金利)へ寄ります。
基準2:完済までに残る年数がどれくらいあるか
返済期間が長いほど、金利が見直される回数も増え、その分だけ変動の影響を受ける機会が多くなります。返済期間が短い場合や、繰上返済によって早期の完済が見込める場合は、変動の影響を受ける期間自体が限られるためAへ寄ります。長期の返済を前提とし、大きな繰上返済を予定していない場合はBへ寄ります。
基準3:返済額が確定していることに、どれだけ価値を感じるか
毎月の支出が動かないほうが計画を立てやすい、という場合はBの性質が生きます。逆に、見直しのたびに条件を確認し、必要に応じて繰上返済や借り換えを検討する形を負担と感じないならAでも無理が生じにくくなります。この基準は好みの問題として扱ってよい部分ですが、基準1を満たしていることが前提になります。
3つの基準で見る、変動金利が向いている人・固定金利が向いている人
変動金利(A)が向いているのは、次のような場合です
- 金利が上がった場合の返済額を試算したうえで、その金額でも家計が回る見通しがある
- 借入額が収入に対して抑えられており、返済の余力が残っている
- 繰上返済の予定があり、完済までの期間を短くできる見込みがある
- 金利の見直し時に条件を確認し、必要なら手を打つ形を負担に感じない
固定金利(B)が向いているのは、次のような場合です
- 返済額が増えると家計が成り立たなくなる、あるいは他の支出を削れない
- 返済期間が長く、期間中に教育費などの支出の山が重なる見込みがある
- 共働きから片働きへ変わる可能性など、収入が下がる場面が想定される
- 毎月の支出を固定して、長期の生活設計を先に組み立てたい
基準が割れた場合の決め方
基準が割れた場合は、基準1(返済額の増加を吸収できるか)の答えを優先することをおすすめします。 基準2の返済期間は、繰上返済によって後から短くできる余地があります。一方、返済額が増えたときに払えないという状態は、他のどの利点でも埋め合わせられません。取り返しの付きにくいものを先に当てはめる、というだけの理由です。
変動金利か固定金利かを決める前に、先にやっておくこと
- 金利が1%、2%上がった場合の毎月の返済額を、金融機関の試算ツール等で計算して書き出す。基準1はこの数字がないと判定できません
- 候補の商品に、返済額の据え置きの扱い(5年ルール)と改定幅の上限(125%ルール)があるかを確認する
- 固定期間選択型を検討している場合は、固定期間が終わった後に何が適用されるのかを確認する。期間終了後は再選択となり、据え置きの扱いが適用されない場合があります
- 繰上返済の手数料・最低金額・手続き方法を確認する
よくある質問
Q. 変動金利のほうが総返済額は少なくなりますか?
A. 将来の金利がどう動くかによって変わるため、どちらが少なくなるかを事前に断定することはできません。借入当初の金利は変動のほうが低く設定される傾向があるとされますが、返済期間中に金利が上昇すれば結果は変わります。
Q. 金利が上がってから固定に切り替えれば良いのではないでしょうか?
A. 切り替えや借り換え自体は一般に可能とされますが、市場金利が上がる局面では固定金利の水準も通常は上がっているため、切り替え先の条件も同時に変わります。また借り換えには審査と諸費用が伴い、その時点の収入や健康状態によっては手続きが進まない場合もあります。
Q. 変動と固定を組み合わせることはできますか?
A. 借入を2本に分けて、一方を変動、もう一方を固定とする取り扱いを設けている金融機関もあるとされます。ただし取り扱いの有無や手数料の扱いは金融機関によって異なるため、候補の金融機関で条件を確認してみてください。
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執筆者情報
本記事は、選択コラム(複数の選択肢を比較して決めたい読者に向けた記事)の執筆方針に基づき、断定的な結論や有利さの保証を避け、読者自身が判断基準を持てるようになることを目的として執筆しています。特定の金融機関・住宅ローン商品を推奨するものではなく、個別の借入判断に対する助言を行うものでもありません。実在の監修者は現時点でいないため、執筆方針の明記のみを行っています。また、個人の体験談を結論の断定材料として用いていません。金利や商品の条件は金融機関や時期によって異なるため、具体的な検討にあたっては候補の金融機関の商品説明書および契約書面をご確認ください。

